積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「全身打撲しているし、腫れているところもあるからな。我慢しなくていいから、辛い時は言えよ。痛み止め出すから」

「うん」

「他に、例えば気持ち悪いとか胸が苦しいとかはどうだ?」

「そういうのはないよ」

「そうか。それなら、今のところは大丈夫かな」

諒は明らかにほっとしたような顔をすると、今度は母に向き直った。

「頭の方の説明は聞きましたか?」

栞が脇から言った。

「その時はまだおばさんが来る前で、少しご年配の先生から、頭の方は大丈夫みたいだけど、念のため入院して様子見るって言われたよ。後は整形の先生が説明に来るって言ってたけど、もしかしてその先生って、お兄ちゃんのこと?」

「あぁ、最初に瑞月を診たのが俺なんだ」

諒は栞から私の母へと視線を移すと、時々私の顔を見ながら状態を説明してくれた。

レントゲンを撮った結果骨折している部分はなく、足首の痛みと腫れは捻った時の捻挫によるものらしい。打撲の痛みや腫れも徐々に引いていくはずで、だいたいひと月もあれば完治するだろうという。できれば一週間ほどは安静に、その後は通院で経過観察と付け加える。

その後、諒は母に訊ねた。

「何か気になることとか、質問ありますか?」

「あの、安静ということですけど、やっぱり長めに入院ということになるのかしら?」

諒は頷く。

「そうですね。痛みが多少収まって、動くのに不都合がなくなるまでは入院してもらった方がいいと思います。何かあっても、こちらですぐに対処できますし」

「退院してからお仕事への復帰は?」

「一週間くらいは休んだ方がいいでしょうけど、そこは様子を見つつでしょうかね。頭のこともあるから、念のためひと月くらいは無理しないように気を付けてもらいたいかな」
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