積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
もしもこの先、俺といとこの間に、仮に恋愛感情が芽生えることがあったとしても、瑞月は何とも思わないのだろうか――。

そう思ったら、胸が苦しくなった。

高山凛。瑞月にとって姉のような存在のいとこ。

瑞月がそうしてほしいというなら、ひとまず仲良くしようじゃないかと思い直し、俺はその名前を頭にインプットした。

入学式当日になり、昇降口に張り出されていたクラス発表の名簿にその名前を探す。俺の名前は二組に、彼女の名前は四組にあった。

入学式が始まった。

式は順調に進み、各クラスの担任が生徒の名前を呼んでいく。その都度返事をして立ち上がり、最後に全員で一礼をする。

そんな流れで二組だった俺たちの番が終わってからは、「高山凛」という名前が呼ばれるその時を、俺は耳を澄ませてじっと待っていた。

「高山凛」

ついにその名前が呼ばれた。

少し低めの声が答えた。

俺ははっとしてその方向にちらと目をやり、途端に目を見張った。まさかと思った。お菓子作りだのアクセサリー作りだの、そんな話ばかり聞いていたから、俺はずっと勝手に女だと思い込んでいた。

しかし周りより少し背が高いその人物は、学ランを身に着けていたのだ。

男だったなんて……。

心臓が急にドキドキし始めて、俺は落ち着かなくなった。嫉妬という感情を恐らくはこの時初めて知り、それを持て余した。これまでも瑞月のことは愛おしく思ってはいたが、明らかにこれは恋だと自覚した瞬間でもあった。

高山凛はライバルになった。瑞月が慕っている相手だと思うと、敵意という黒い感情が渦巻くのを止めることができなかった。
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