積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「だって、昨日帰る前に言ってたから」

「何を?」

「ん。またこんなことがあったら心配だから、今付き合っている人がいないのなら地元に帰ってくることも考えてほしいって。なんならお見合いしたっていいじゃないの、って……」

言ってからはっとした。私としては単なる報告のような、軽い話題のつもりで言ったのだったが、諒が真顔で私をじっと見つめていた。口が滑ったと後悔する。

「お見合い、って何?付き合ってる人がいるって、言わなかったの?」

諒の低い声に嫌な動悸がする。

「え、いえ、その、切り出すタイミングとか、色々あるかなと思ったから……。今のだって、別に深い意味は何もない、ただの話でしかなくて……」

諒はおもむろに立ち上がると、私の隣に座り直した。

「――なぁ、瑞月。こんな話をするのはまだ早いと思ってたんだけどさ」

「う、うん」

諒の声が今までになく真剣で、私は緊張した。

「この先もずっと、俺の傍にいてくれないか?」

「え?」

瞬きを止めた私を諒は見つめる。

「俺は瑞月とこれからもずっと一緒にいたい。瑞月はどう思ってる?嫌か?」

私は瞬きをして諒の目を見返しながら、首を横に振る。

「嫌だなんてそんなはずないじゃない。私の気持ちは知ってるでしょ」

その答えを待っていたかのように、諒は顔を綻ばせて私にキスをした。

「それならさ」

諒は私と目線を合わせ、私の手を両手で包み込んだ。

「今度、婚約指輪を買いに行こう」

「婚約指輪……」

目を瞬かせる私に、諒はひと言ひと言区切るように言葉を並べる。

「瑞月、俺と、結婚しよう」

「結婚……?」

「そうだよ」

「でも……私……」

諒の言葉に急に現実に引き戻されたような気になった。私は諒の恋人から妻になっていいのだろうかと、しばらくの間忘れていた不安が再び頭をもたげる。
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