積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
ためらって言葉を濁らせる私に、諒はずいっと体を移動し距離を縮めた。

「なんだよ。やっぱり、他の男も見てみたいとか言うんじゃないだろうな」

私は諒から目を逸らした。

「そうじゃなくて……。諒ちゃんは本当にそれでいいのかなって思ってしまって……。だって私、看護師の資格も何もないよ。諒ちゃんの将来のためになるような繋がりだって、何もないんだよ?私と結婚しても何のメリットもないよ」

「何を言い出すのかと思ったら……」

諒は肩を揺らして大きなため息をついた。

「俺がメリットデメリットを考えて、お前と付き合ってるとでも思ってた?」

「そういうわけじゃないけど……。だって、諒ちゃんはおじさんのクリニックを継ぐんでしょ?だったら、おじさんたちは、看護師さんとか女医さんと結婚してほしいとか、思っていたりするんじゃないかと……」

諒は脱力したように肩を落とした。

「瑞月、俺はお前のことを、もうずっと何年も好きだったって言ったよな。忘れたなんて言うなよ。そんなお前がようやく手に入って、どれだけ嬉しかったと思う。仮に父さんたちが反対したとしても、俺はお前と別れるつもりなんてさらさらないからな。もしもそんな話を持ち出してくるようなら、俺は実家なんか継がない。なんなら自分でクリニックを建てたっていいんだ。でもその前に、よく考えてみろよ。俺の両親、父さんは医師だけど、母さんは看護師でも医師でもない。結婚してから医療事務を勉強して、今、ああやって後方支援してるんだ。第一、俺は瑞月を俺の仕事に縛るつもりはない。好きな仕事があればそれをやってくれていいし、家庭に収まりたいっていうんならそれで全然構わない」
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