積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
諒はふうっと息を吐き出して、私の手をきゅっと握った。

「説明、まだ足りないところ、あるか?」

私はゆっくりと首を振った。鼻の奥がつんとしている。

「……ない。十分だよ」

「じゃ、答え、くれないか。これでも俺、今ものすごく緊張してるんだ。これ以上返事待たされたら、心臓が止まるかもしれない」

自分自身の緊張を和らげようとしているのか、それとも私が答えやすいように言ってくれているのか――。よく見れば諒の目は笑っていた。

「……はい」

「何が、『はい』なの?」

意地悪な目をして訊き返す諒に、私は言葉を足してもう一度言った。

「諒ちゃんのプロポーズ、お受けします」

「なんだよ。ずいぶんと堅苦しい答え方だな」

諒はあははと笑うと、私にキスした。すぐに唇を離したが、残念そうな顔をしている。

「この続きは、瑞月が完治するまでもう少しお預けだな。それに今日は何の準備もなくて、急なプロポーズになってしまったから、今度改めさせてよ」

「今ので全然大丈夫だよ」

「俺がそうしたいの」

「分かった。ーーあのね、諒ちゃん。ありがとう。すごく嬉しいよ」

私は目を潤ませて諒を見た。

「うん」

諒は満足そうに、幸せそうに微笑むと、少しだけ長く私にキスをした。唇を離すと天井を仰いで、大きなため息をついた。

「あぁぁ。仕方ないのは分かってるけど、今すぐ抱きたいのに抱けないこの辛さ」

私はくすっと笑い、それからはにかみながら言った。

「ちゃんと治ったら、たくさん愛して」

「言われなくてもそのつもりだよ」

抱き合えない代わりに、私たちは互いの温もりを感じ合うかのように手を取り合い、指を絡ませ合った。
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