積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「凛ちゃんにはもう会った?」

入学後しばらくして、一度だけ瑞月からそう訊ねられたことがあったが、俺は適当にごまかした。

「いや、実はどの人がそうなのか、ちょっと分からなくてさ」

うちの高校は生徒数が多かったから、クラスが違えば知らない人間がいたとしてもおかしくはない。

言い訳めいていると思いながらもそう付け加えると、瑞月は特に疑問に思った様子もなく、素直に納得したようだった。少しだけ残念そうな顔をした後に、何かを思いついたらしくこう言った。

「今度、みんなで遊ばない?」

「え?」

面倒だし、瑞月があいつと仲が良さそうにしている所なんて見たくない――。

それが本心だったが、俺は理解あるふりをして頷いた。

「あぁ、それも悪くないな」

瑞月が嬉しそうに笑うのを見て心はざわめいたが、結局そんな機会はないままに俺は高校二年生になった。そして、俺にとっては最悪の事態が起きた。高山とクラスメイトになってしまったのだ。そうなってしまっては、関わらないでいることは難しい。

嫉妬心を抱えたまま、高山に普通に接することができるだろうか――。

俺にはその自信がなかった。それなのに、ホームルームでの自己紹介の後、高山は俺の方にわざわざ近寄って来て言ったのだ。

「はじめまして、高山凛です。久保田君が瑞月ちゃんとご近所で、幼馴染だってことは聞いているよ。これからよろしくね」

「あ、ああ。よろしく」

にこやかに笑顔を浮かべる高山に、俺は無理矢理作った笑顔で挨拶を返した。

しかしその数日後、早速俺の気持ちをさらに揺さぶる出来事があった。
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