【改訂版】積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は想いを秘め続けていた〜
 一つの疑問が浮かび、私は首を捻る。

「諒ちゃんは今までどうしてたの?」
「学食とかお弁当、たまの男飯、あとは凛ちゃんとご飯一緒にしたりして、なんとかしてたみたい」
「凛ちゃんか。なるほど」

 栞の答えに納得して私は言った。

「これからも、たまに凛ちゃんにお願いするのは難しいの?栞と凛ちゃんだって、知らない仲じゃないし」

 嫌だと思ったわけではない。本当は行きたい気持ちが強かったが、凛がいるのなら私の出る幕はさそうだと思ったのだ。
 すると栞は微笑んだ。

「実は凛ちゃん、最近いい人ができたみたいなの。だから遠慮した方がいいのかな、ってお兄ちゃんと話してたのよ」

 栞も凛の恋愛事情を知っている。

「そうだったの?全然知らなかった。凛ちゃんたら、私にも教えてくれたらいいのに」
「私も本当に最近、聞いたばかりよ。お兄ちゃん経由でね。そのうち瑞月にも話すんじゃないかな」
「分かった。大人しく報告を待つことにする」
「うん。そうして。――それでさ、最初の話に戻るんだけど。どうかな?だめ?」
「だめってことはないけど、私、そんなにすごいものは作れないよ?」
 
 栞の目がぱっと輝いた。

「そんなことないよ!絶対に私たちよりも上手だもの。それに、瑞月も一人でご飯食べて、学校に行くだけじゃつまらなくない?おばさんたちだって、普段から私たちと一緒にいるって分かればもっと安心するはず。ずっとじゃなくて、少しの間だけ、たまにでいいから、どうかお願いします!」

 回りくどい誘い方だが、これは栞の気遣いだと察した。一人暮らしで私が寂しがっているのではないかと思ったのだろう。確かに正直に言えば、一人ぼっちの食事は静かすぎて寂しい。
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