積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
ほっとする私に諒は言う。

――当たり前だろ。瑞月が俺に相談したいなんて言うの、割と珍しいからな。心配になる。いったんウチに寄ってから行くよ。なんでもいいから、何か食べる物でも用意してもらえたら、ものすごくありがたいんだけど。お茶漬けでもいいからさ。

「うん。分かった。ありがとう。気を付けてきてね。待ってる」

私は電話を切ると、諒のために軽めの夜食の準備を始めた。

それから一時間もしないうちに、インターホンが鳴った。諒だった。

私はいそいそと玄関に向かい、ドアを開けて諒を招き入れた。

「お疲れ様。忙しいのに、会いたいなんて言ってごめんね」

「全然。瑞月の顔を見たら、疲れも吹っ飛んだよ」

「ふふっ。お夜食、できてるよ」

「お、助かる。腹ペコなんだ」

お腹をさするような仕草をしながら、諒は嬉しそうに笑った。部屋に入ると、手にしていた二つのリュックを床に置き、テーブルの前に腰を下ろす。

「仕事の時は、いつもリュック二つも持って行ってるの?」

「ん?これ?」

リュックにちらと目をやってから、諒はにやりと笑った。

「一つは泊まる時のやつ」

「泊まる時用?」

「宿直用にね。でも今夜は、このまま泊まって行こうと思ってさ。お前は明日休みだろ?いいよな?」

「それはいいけど……。でも、諒ちゃんの明日の仕事は?ここから出勤で大丈夫?」

「明日は少し遅めに出てもいいんだ」

「そうなんだ。じゃあ、明日の朝ごはん、一緒に食べられるかな?」

「あぁ。だからさ……」

諒は口元に笑みを浮かべて私をちらりと見た。

「全身の痛み、もう大丈夫だろ?」

「おかげさまで、それは……」

諒の言いたいことが何か分かって、どきりとする。頰が熱を持つ。

そんな私を見て諒はくすりと笑った。
< 200 / 242 >

この作品をシェア

pagetop