積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
諒は腕を組んで考え込む。

「郵便受けに直接入っていたってことは、瑞月のことを当然知っているってことだよな。そして俺たちの関係も知っている……。このことを知っている、あるいは気づいているのは……」

「栞は知ってるけど、他には特にまだ言ってないよ」

「だとすればやっぱり俺関係かな……。入院中にさ、看護師長に瑞月のこと紹介しただろ?あの後結局、病棟のナースたちにも知られたんだよな」

「そうなのね」

諒は苦笑いを浮かべた。

「あえてそうなるように仕向けてたところはあったから、そういう意味では成功したことになるけど。やっぱり、にやにやした顔されるとやりにくいな」

なんと言ってあげればいいか分からず、私も苦笑する。

「そしてその話はきっと病棟だけじゃなく、外来のナースにも伝わっているはず。となると、受付の彼女だって耳にした可能性が高い」

「なるほど……。それなら、私の住所はどうやって?」

「想像だけど……」

諒は前置きをして続ける。

「彼女は整形外来の受付をやっている。退院した後、お前、何度か俺の診察を受けに来ただろ?その時も受付にいたはずだ。お前より少し年上くらいで、細めの銀のフレームの眼鏡の女性。背中辺りまでの長い髪を、後ろで一つにまとめている人だ」

私は宙を見ながら、その時の受付の様子を思い浮かべた。

「……言われてみれば、受付の人、そういう感じだった」

確かに退院後、二、三回診察を受けに行った。脳外科に一度、後は整形で諒の診察を受けた。
< 202 / 242 >

この作品をシェア

pagetop