積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
私はふと疑問に思って訊ねた。

「診察室って、事務の人も入っていいんだっけ?」

「いや。前にも言ったと思うけど、診察時間内は特に、本当はナースまでなんだ。師長に相談して本人にも伝わってると思ってたんだけど。さて、どうするかな……」

諒は唸った。

「こう考えてくると、やっぱり彼女のような気もするけど、状況だけで決めつけるわけにはいかないし、直接聞いてみるっていうのもな。知らない、違うって言い張られておしまいのような気もする。……この手紙の件は一応警察にも言っておくか」

「でもこれ、脅迫っていうほどの内容じゃないよね。話、聞いてくれるのかな」

「うぅん……」

諒は私を心配そうに見ていたが、何か名案でも思いついたかのように目を軽く見開いた。

「消極的な方法だけど、しばらくの間、俺の部屋に来ていたら?」

「え?」

諒の言葉はとても嬉しかったが、多忙な諒の迷惑になるのではないかと思った。それだけではなく、両親たちに万が一にも知られたら非常にまずい。

そう伝えると、彼は私を抱き締めながら言った。

「いつも俺が傍にいられればいいんだけど難しいから、せめてさ。それに、そうと決まった訳じゃないけど、仮にこの手紙を書いたのが彼女だとしたら、俺の住所はきっと分からないはず。病院でがっちり管理してるらしいからな。その間、早いうちに俺は上の方にちょっと相談してみるよ。おじさんたちには……心苦しいけど、俺の部屋に泊まることは黙っていた方が無難だろうな」

諒は苦笑いを浮かべる。
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