積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜

EP-26

互いの実家に挨拶に行こう――。

そう決めて日程も調整できたその当日。私は諒の車の助手席に乗っていた。二人してフォーマルとまではいかないまでも、諒はダークグレーのスーツを着てネクタイをし、私は落ち着いて見えるベージュのワンピースに白のカーディガンを羽織って来た。

どちらの家のことも、家族のこともよく知ってはいるけれど、交際と結婚を考えていることを報告しに行くというのは、どことなく面はゆい上に緊張する。それは諒も恐らくは同じような気持ちだったようで、車中の会話がいつもよりも弾まなかったのは仕方ない。

まずは私の実家へ向かったが、約束の時間より少し早く到着した。実家前の空きスペースに車を停めると、諒はやや緊張した面持ちで私を見た。

「いよいよだな」

「うん」

固い表情の諒の顔を見たら、私にもそれがうつったようになって、にわかに緊張してきた。ごくりと生唾を飲み込む。

「子どもの頃から知っている人たちだっていうのに、やっぱり緊張するな。なんていうか、落とせない試験前とかの緊張感に似てる」

「私も後でおじさんとおばさんに会いに行くと思うと、もう今から心臓が痛いんだけど……」

「大丈夫だ。とにかく行くぞ。もう約束の時間だ」

「そ、そうだね」

お互いに意を決したかのような顔で頷き合い、私たちは車の外に出た。

それと同時に玄関のドアが開いて、母が姿を見せた。

「なかなか車から降りてこないから、見に来ちゃったわ」

そう言いながら私の顔を見た母だったが、次の瞬間その場に立ち尽くし、目を大きく見開いた。母の視線は私を通り越して、諒を見つめていた。

「あらっ、諒ちゃん?えっ?どういうこと?」

母の声が何トーン分か上がった。
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