積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
母は父の言葉に大きく頷いた。

「えぇ。瑞月の性格をよく知っている諒ちゃんなら、安心して任せられるわ。むしろ、もらってくれてありがたいくらいよ。諒ちゃん。瑞月のこと、これからもどうかよろしくお願いします」

母は諒に頭を下げた。

諒はようやく安堵したのか、頬を緩めて笑った。

「私の方こそ、よろしくお願いします」

黙って三人の様子を見守っていた私だったが、感動と安心のためか涙が浮かんできていた。流れ落ちそうになる前にと思ってハンカチで涙を拭っていると、母がせっつくように言った。

「さて、瑞月。次は諒ちゃんのお家の番よ」

「え、そうだね。うん」

感動の余韻に浸る暇も何もないんだけど……。

私は目元に涙の跡をわずかに残しながら、苦笑した。

それに気づいているのかいないのか。母が場を仕切り出した。

「諒ちゃんのお家でも、今頃は二人とも首を長くして待っているはずよ。時間は大丈夫?諒ちゃん、瑞月を連れて行くって言ってあるの?」

「いや、ただ、結婚したい人を連れて行くとしか……」

「それならきっと驚くわね。でも、ちゃんと、瑞月を認めてもらえるのかしらね。なんだかお母さんまで緊張してきちゃったわ」

「やめてよ、ただでさえ緊張してるのに」

「大丈夫だよ。さ、さっさと行って済ませて来ようぜ」

諒の口調がいつも通りに戻っている。

「さっさとって、そんな言い方……」

「万が一反対されたりしたら、諒ちゃんはうちのお婿さんに頂くから、安心して大丈夫よ。ね、あなた」

「ああ、それも悪くないな」

「二人とも、何を言ってるのよ。諒ちゃんはおじさんの後を……」

「それは別にこだわらなくていいって言っただろ?」

「いえ、今はそういうことを言いたいんじゃなくて」
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