積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
眉間にしわを寄せている私に諒は笑う。

「分かってるって。おじさんたちは、心配する必要はないってことを言いたいんだよ。さて、ちょっと早いけど行こうか」

「う、うん」

喉の奥まで心臓がドキドキしてきた。私はふうっと深呼吸を一つして、ソファから立ち上がった。

「挨拶が終わったら、二人でまたこっちに戻ってくるのよ。お昼ごはん、ちゃんと準備してあるからね。なんなら、先生と真希子さんも一緒に連れていらっしゃいな。みんなでお祝いしましょう」

「はい。それじゃあ、もう少し瑞月のこと、お借りしますね」

「瑞月、しっかりね」

「行ってきます……」

私は母に背を押されるようにして、我が家の玄関を後にした。

諒の実家に行くと、予想通り二人は驚いた顔をした。

特に諒の母、真希子おばさんも、私の母に負けず劣らず大きく目を見開いて、何度も瞬きを繰り返していた。しかしその後満面の笑みを浮かべると、今度は私の手を取るようにしていそいそとリビングへと引っ張って行く。

諒が慌てて私たちの後を追いかけて来る。

「ちょっと、母さん」

「あら、諒、遅いわよ」

「遅いわよって、あのね」

「あなた、瑞月ちゃんよ。諒のお嫁さんになってくれるんですって!」

「おやおや、これは驚いたな。そうかそうか。瑞月ちゃんなら大歓迎だ。瑞月ちゃん、久しぶりだね。この前会ったのは正月?いや、それとも盆だったかな?」

「はい、お正月です。それで、あの、おじさま、おばさま、今日はお忙しい中お時間を……」

私がそう言いかけるのを遮るようにして、おばさんはにこにこして言った。

「固い挨拶はいいから。いつも通りに、おじさん、おばさんでいいのよ。ほら、座ってちょうだい」
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