積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「えぇと、あの……」

私は動揺した。諒と一応の段取りを考えてきていたのだが、玄関に入った所からすでにその流れは崩れている。

諒は困惑している私の隣に立つと、呆れた顔で自分の両親たちを見た。

「二人とも、ちょっと待ってよ。けじめというか、一つの区切りとして、ちゃんと挨拶させてほしいんだけど」

「あら、そうなの?じゃあ、聞きましょうか。ね、あなた」

おじさんは恥ずかしそうに苦笑していた。

「そうだな。一応はちゃんとしないとな」

二人がソファに腰を落ち着けてくれたところで、私たちは改めて、自分たちの交際のことと結婚したいと考えていることを伝えた。

二人は私たちの話を聞き終わると、嬉しそうな顔を私たちに向けて言った。

「瑞月ちゃん、諒のこと、よろしくね」

こうして、諒の両親への挨拶も無事に済んだ。その後は、みんなそろって私の実家へと向かう。その中には栞もいた。

挨拶を終えてから、皆で雑談を交わしていたところに栞が姿を見せたのだ。

――うちの親たちが、もしも二人のことを反対するようだったら援護しようと思って来たんだけど、全然必要なかったね。瑞月、よかったね。お兄ちゃんもおめでとう。

そう言って栞は明るく笑ったのだった。

こうして互いの家族全員が揃い、私の実家で昼食会が持たれた。

そこには二時間近くいただろうか。時計を見て諒が私に声をかけた。

「そろそろ帰ろうか」

それを耳にした両家の親たちが引き留める。

「もっとゆっくりしていけばいいのに」

諒は笑いながらこう言った。

「この後、向こうに戻って指輪を見に行くんだよ」

そのひと言は効果的だった。

それなら仕方がない、早く帰りなさいと、笑顔の家族一同に見送られて、私たちは帰りの車に乗ったのだった。
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