積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜

EP-3

諒と凛が大学受験を目前に控えた冬のことだった。私と栞は中学二年生になっていた。

栞がバレンタイン・デイ用のチョコを作りたいと言い出した。クラスに好きな男子がいて、彼に渡したいのだと言う。話を聞くに、どうもお付き合いしているような感じだった。

その頃の私は、凛の手ほどきと影響を受けて、お菓子作りが趣味の一つになっていた。だから、栞のチョコ作りを二つ返事で手伝うことにした。

約束の時間に栞の家に着き、ドアチャイムを鳴らす。しばらく待っていると、ドアが開いた。中から諒が顔を出す。

「やぁ、いらっしゃい。栞と約束か?」

「うん。栞とチョコを作るの」

「チョコ?ふぅん……。ま、上がれよ」

「お邪魔します」

私は靴を脱いで上がり框に足を乗せた。

「栞、瑞月が来たぞ」

諒がキッチンの方に向かって声を投げかけると、栞の声が返って来た。

「はぁい!瑞月、こっちに来て!」

「うん、今行く」

私はコートを脱ぎながら、諒に訊ねた。

「諒ちゃんは、これから塾?」

「いや、今日はうちにいるよ」

「そうなんだ」

諒の顔を見上げて、私はふと違和感を覚えた。

諒ちゃんって、こんなに背が高かったかな……?

その言葉は、実際に口から出てしまっていたらしい。

「成長期だからな。そういう瑞月も、まだ背が伸びそうだな」

諒が笑って私を見下ろした。
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