積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜

EP-28

バーを出て一度フロントに寄り、カードキーと預けていた荷物を受け取る。部屋に入ると、カーテンが開いたままの窓の向こうに夜景が見えた。

「素敵!」

広々とした部屋だ。ベッドはセミダブル、シックな雰囲気のバスルームにはアメニティが揃い、バスローブも用意されている。窓辺に置かれたソファも座り心地がいい。

部屋を見て回っている私に向かって諒は言う。

「これがクリスマスだったら、もっとロマンティックなデートになるんだろうけどな」

「そんなことないよ。十分すぎるくらいよ。諒ちゃん、今日は素敵な時間をありがとう」

「俺こそありがとう。思えば瑞月とこうなってから、外でデートらしいデートをしたのって、一回くらいだろう?俺の仕事の都合で、部屋で過ごすことの方がどうしても多くなってしまっていたからさ。早く結婚したいのはもちろんなんだけど、できるだけたくさん、こんな風に恋人らしい時間も持ちたいと思ってるんだ。そのうち、ちょっとした旅行にも行けたらいいな、なんて思ってる」

「色々と考えてくれて、ありがとう」

私は諒の傍に行き、彼を見上げた。

「でも私、諒ちゃんと一緒にいられるだけで幸せなんだよ」

「瑞月ならそう言うだろうと思ってた」

諒は私に口づけた。ゆっくりと唇を離し、私を抱き締める。

「瑞月、好きだよ。抱きたい」

「……うん。いいよ」

諒は意外そうな顔で私を見下ろした。

「ストレートすぎるって、今日は文句言わないのか?」

「言わないよ」

私は諒の胸に頬をくっつけた。

「だって、今日は私たちにとって特別な日なんでしょ?体中に今日の記憶が残るくらい、たくさん愛してほしい」

「そんな煽るようなこと言っていいのか。後悔しても知らないからな」

諒は言いながらジャケットを脱ぎ、ネクタイを外して、ソファの背にかけた。
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