積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
いよいよ引っ越し当日。

諒は仕事でいないが、その代わりに栞と凛が手伝ってくれている。引っ越す日が決まってすぐ、図々しいお願いだと思いながら二人に頼んでみたら、ありがたいことに二つ返事で引き受けてくれたのだ。

「瑞月ちゃん、こっちはもう終わったんだけど、あとはどこを掃除するといい?」

凛がバケツを手に私に声をかける。

私はガス周りのもっとも手ごわい所と格闘しながら、凛に答えた。

「うぅんと、後はキッチンの水回りかな」

「オッケー」

しばらく二人して並んでもくもくと掃除に勤しむ。

「やっと綺麗になったぁ」

「こっちもよ」

私たちは互いに満足げに顔を見合わせて笑い合った。

「凛ちゃん、今日は手伝いに来てくれて本当にありがとう。すごく助かったよ」

「どういたしまして。今はこんな時くらいしか、役に立てないからね。荷物は栞ちゃんが受けてくれたのよね」

「そうなの。さっき、届いたよ、って連絡があった。処分するものの方が多かったくらいで、荷物もそんなに多くはなかったから、一人でもなんとかなったのかもしれないんだけど。でも、やっぱり二人が来てくれて、本当に助かったの」

「そう言ってもらえると来たかいがあったってものね」

「ねぇ、凛ちゃん。今夜は予定ある?なかったら、ウチで晩御飯食べて行かない?栞にも言ってあるんだ」

「え?特には何もないけど……。でも疲れていない?」

「大丈夫だよ。実はね、昨日のうちに色々下準備してあるの。だからぜひウチでご飯食べてって」

「そう?じゃあ、お言葉に甘えて。わたしも何品か作ろうか?食材は足りそうかしら?」

「うん、昨日色々買って、ウチの冷蔵庫に入れてあるの。わぁ、凛ちゃんの料理食べるの、すごく久しぶり。よし、そうと決まれば、もうウチに帰ろうよ」

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