積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「ふふふっ」

凛が口元に手を当てて、突然笑い声を上げた。

「何?」

私は首を傾げて凜を見上げた。

「瑞月ちゃん、諒の部屋のことを『ウチ』って言ってるんだなぁって思ってね」

言われて私ははたと気づく。

「あ……」

「それだけ今はもう、諒と一緒にいることが普通になったってことなのね」

「え、あの……うん……」

頬がほわっと熱くなったのが分かった。凛には私たちがすでに一緒に暮らしていることなど、すっかりお見通しらしい。私は凛に向かって両手を合わせた。

「この引っ越しから一緒に住むってことになってるの。だから、お母さんたちには黙ってて」

凛はくすくす笑う。

「別に言わないわよ。だけど、知った所でおばさんたちは怒ったりしないと思うけどな。だって、今の瑞月ちゃんが、こんなに幸せそうな顔をしているんだから」

「凛ちゃん……」

「瑞月ちゃん、おめでとう。諒ならきっと、瑞月ちゃんを大切に、幸せにしてくれるはずだからね」

きっと凛も、諒の気持ちをずっと知っていたのだろう。従兄の言葉の中に、その時間を感じさせるような響きを感じて、私の胸はきゅっと鳴った。目元にじわりとこみ上げてくるものがあって、凛の顔がわずかに霞んで見えた。

「凛ちゃん、ありがとう」

私は彼に礼の言葉を言いながら、指先で目元を拭う。

「結婚式、呼んでよ。その時は、諒が嫉妬するくらいイイオトコ風の格好で参列してあげる」

凛はそんなことを言ってウインクしてみせた。

「凛ちゃんたら」

「さ、そろそろ行きましょうか。瑞月ちゃんの新居にね。栞ちゃんも待ってるんでしょ?」

「うん」

私は頷くと、掃除用具のあれこれを大きなマイバッグの中に仕舞いこんだ。
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