積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜

諒が帰って来たのは、少し遅めの夕食の支度が整った頃だった。

今夜は凛も手伝ってくれたし、四人揃っての食事だからテーブルに乗りきらないほど豪勢な食卓になった。それを見た諒は目を丸くし、続いて凛と栞に向けて礼の言葉を口にする。

「二人とも、今日は俺の代わりに瑞月の引っ越しを手伝ってくれてありがとう。この礼はまた改めてさせてくれ」

頭を下げる諒に、凛と栞は顔を見合わせて笑う。

「別に、お礼なんていらないよ。ねぇ、凛ちゃん？」

「そうそう。これからもずっと、瑞月ちゃんを大切にしてくれればそれでいいわよ。ね、栞ちゃん？」

「凛ちゃんの言う通りだよ。とにかく食事にしようよ。お兄ちゃんもお腹すいてるでしょ？今日は瑞月のご飯だけじゃなくて、凛ちゃんのご飯もいただけるなんて、すごく楽しみなんだ」

「そう言ってもらえると嬉しいわ。ねぇ、瑞月ちゃん？」

「うん。諒ちゃん、早く着替えておいでよ。ワイン、一杯くらい飲める？お祝いだって言って、栞が買って来てくれたんだよ」

「お、お前にしちゃ、気が利くな。ありがとな」

「素直にありがとうでいいのに、ひと言多いところは、やっぱり変わらないんだね」

栞は肩をすくめて実の兄を軽く睨んだ。

「基本的に、性格はそう簡単には変わらないんだよ」

「二人とも、相変わらず仲がいいのは分かったから、早くご飯にしようよ」

私は二人の掛け合いをどこか懐かしく感じながら、苦笑しつつ彼らに声をかけた。

「そうだな。すぐに着替えて来るよ」

そう言って自分の部屋へ入って行った諒は、しばらくするとラフな部屋着姿で戻ってきた。

みんながそろったところで、私は改めて凛と栞に頭を下げた。

「二人とも、今日は手伝いに来てくれて本当にありがとうございました」

「どういたしまして。他ならぬ瑞月ちゃんのお願いだもの。当然よ」

「そうだよ。とにかく、お疲れ様！そして瑞月の引っ越し、おめでとう！」

栞が元気よくグラスを掲げたのを合図に、私たちは懐かしい昔話に花を咲かせながら楽しいひとときを過ごした。