積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「そうだ、あのさ」

階段に向かおうとして、諒はふと足を止めた。

「あとで何か飲み物持ってきてくれよ。その時、なんでもいいから甘いものもつけてくれないか?万が一成功してたら、そのチョコでもいいや。せっかくだ、厳しい目でチェックしてやる」

「ふんっ。絶対驚かせてやるからね」

「はいはい。じゃあな、瑞月」

「うん。諒ちゃんは、勉強頑張ってね」

私は諒に向かって笑顔を見せた。

栞が痺れを切らしたように私を再び呼ぶ。

「瑞月、早く!お兄ちゃんなんかどうでもいいから」

「今行くって」

私は振り向いて栞に返事をすると、諒の方に顔を戻した。

しかしその時にはもう、彼は二階の自分の部屋の前にいた。そこから私を見下ろし軽く手を挙げると、部屋に入って行った。

その背中が消えるのを見届けて、私は栞の待つキッチンに向かった。

すでにエプロンを身に着けた栞が、テーブルの上に材料や道具を並べていた。

「よし、と、始めようか。ねぇ、栞。チョコとは別に、パウンドケーキも焼いていい?」

「え、作ってくれるの?もちろん、いいよ!だったらあたし、マーブル模様のがいいなぁ」

「いいよ。栞が作る予定のトリュフに使うから、ココアを持ってきたんだ。ちょうどよかった」

そう言いながら、私は家から持ってきた諸々の材料と型を紙袋の中から取り出す。その後は栞に手順を伝えつつ、私自身はパウンドケーキを作り始めた。
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