積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「できた!」

栞が嬉しそうに笑う。

お菓子作り初心者にしては、思っていたよりも早くでき上がったと思う。

「あとは、ラッピングして終わりだね。それにしても、栞、ほんとに初めて作ったの?すごくきれいにできてるよ」

「ほめてくれてありがとう。瑞月のおかげだよ。ねぇ、あとはお茶でも飲みながら、味見しようよ」

「え、いいの?」

「いいよ、もちろん。少し多めに作ったし。それに、あたしの先生をやってくれた瑞月にも食べてもらって、感想を聞かないと。飲み物は紅茶でいい?」

「うん、ありがとう。そうだ、パウンドケーキ、これも味見してみようか」

私はケーキクーラーの上に置いておいたパウンドケーキの表面に、そっと触れてみる。粗熱も取れて、もう大丈夫そうだ。本当は一日くらい置いた方がしっとりと落ち着くのだが、焼き立ても美味しい。

そういえば、諒が飲み物を持ってきてほしいと言っていた。お茶と一緒に出してあげたら喜ぶかな――。

そんなことを考えていたら、栞がティーカップを並べながら言った。

「そう言えばさ、瑞月は誰かにあげたりしないの?バレンタイン・チョコ」

「うぅん……。お父さんと、凛ちゃんくらいかなぁ」

「うちのお兄ちゃんにはあげないの?」

「諒ちゃん?だって、諒ちゃんは毎年のようにたくさんもらってくるでしょ?食べきれないって言って、私たちにまでくれるじゃない。それに高校生になったら、また量が増えちゃってるし。そんな人にさらにあげたりするのは、迷惑でしかないでしょ」
< 25 / 242 >

この作品をシェア

pagetop