積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
諒の部屋の前に着いた私は、ドアを静かにノックした。

少しだけ待っていると、諒が出てきた。

「お、できたのか?」

「うん。栞のチョコと、私が作ったパウンドケーキ。食べたら後で感想教えてね。はい、これ」

私はそう言って、トレイごとお茶とパウンドケーキを諒の前に差し出した。

しかし、諒はドアを開けて支えながら言う。

「そこのテーブルに置いてもらってもいい?」

「うん。えぇと、お邪魔します……」

小さな頃にはよく入ったことのある部屋だ。しかし、諒が中学生になって一緒に遊ぶことがほとんどなくなってからは、ずっと足を踏み入れたことがなかった。思っていたよりもきれいに片付いていることに、少し驚く。

諒はどちらかというと綺麗好きな方だったことを思い出しながら、私はおずおずと彼の部屋の中に足を踏み入れた。諒が目で示した小さなテーブルの上に、そっとトレイを置く。

「それじゃ、行くね」

「え、もう行くの?味見の感想、聞いていかなくていいのか?」

「えぇと、後でいいよ」

「ちょうど休憩にしようと思っていたところなんだ。これを食べ終わるまででいいから、少し話し相手になってくれよ」

「でも、邪魔でしょ?」

「邪魔?そんなわけないじゃん。たまには瑞月の話も聞きたい。学校のこととかさ」

「私の話なんて面白くもないけど……。それじゃあ、まぁ、失礼します」
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