積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「全然すごくなんかないよ。もしもそう見えるとしたら、凛ちゃんの教え方が上手なんだと思うな」

「凛か……。確かに、あいつ、すごいよな。うちの学校って、一応男子も家庭科の授業っていうのがあるんだけど、この前あいつの手際の良さに先生も驚いてたよ」

「さすがだね」

諒の言う凛の手際の良さが想像できて、私は笑う。

「凛ちゃんは私の先生だからね」

「そうだったな。……ところでさ、お前も誰かにチョコとかあげたりするわけ?」

「うぅんと……。お父さんと、あとは凜ちゃんに、かな」

「え、凛?それなら、俺には?」

不満そうな顔をする諒に、私は苦笑いしながら答えた。

「凛ちゃんは、今はまだ親たちを安心させておきたいって言うから、見せかけの意味で最近は毎年渡してるの。だいたい諒ちゃんなんて、毎年山のようにもらってくるじゃない。それに、本命の彼女さんからだってもらうんだろうから、他にはいらないでしょ」

「彼女なんかいないよ」

「え、そうなの?」

私は目を瞬かせて諒の顔をまじまじと見た。

「なんだか意外」

「どういう意味でそう言ってるのか知らないけど、俺は俺で色々あって、そういう人を作ってる暇なんかないの」

「そうなんだ。せっかくモテてるみたいなのに、残念だねぇ……」

すると、諒は脱力したように大きなため息をついた。

「だから、不特定多数からもらうんだったら、せめて瑞月からはほしいなと思ったんだよなぁ」

「今までそんなこと言ったことなかったのに」

「それは、ほら、今日作るって知ったからさ」
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