積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
そんな環境の中ではあったが、家を出てみたい一心で私は勉強に勤しんだ。傍から見れば、実に地味な女の子だったと思うけれど、その甲斐あって無事に合格通知を手にすることができたのだった。

入学予定の大学には、学部は違ったが栞も通うことが決まっていた。諒もまた、同じ街にある他大学の医学部に通っていた。

いとこだけではなく、幼馴染たちもいる。信頼している人たちが近くにいるということは、知らない街での初めての一人暮らしに対する不安を、私から取り除いてくれた。そしてそれは、両親たちにとっても同じだと思っていたのだが――。

一人暮らし。

それを実現させるまでにも、ひと悶着あった。

実家から大学まで通うのは距離的に難しかった。だから、一人暮らしをせざるを得なかったし、最初はそれも含めて両親は私の受験を認めてくれたはずだった。

マンションを決めて引っ越しの段取りもつき、いよいよ私が実家を離れるという日が近づいてきた時だった。心配が尽きない母が一緒に住むと言い出したのだ。

さすがに父は止めたし、凜も栞も諒も近くに住んでいるのだからと、私も何度も説得した。凛にも応援に回ってもらった。その結果、少し時間がかかりはしたが、最終的に母は渋々ながらもようやく首を縦に振ってくれたのだった。

栞は諒がすでに一人暮らしをしていたマンションに、一緒に住むことが決まっていた。引っ越し前に会った時、彼女はうきうきした顔で言った。

「あっちに行ったらさ、これまでみたいに一緒にご飯食べたり、遊んだりしようね。お兄ちゃんも、瑞月が近くに来るのを楽しみに待っているみたいだったよ。口に出しては言ってなかったけどね」
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