積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
私もまた、栞からうつったうきうきした気分で答えた。

「そうなんだね。これからがすごく楽しみになってきたよ」

大学生活はスムーズに始まった。同じゼミには友達もでき、新しい知識が増えるのも楽しかった。

周りはアルバイトを始める子たちが多かったけれど、私は考えていなかった。アルバイトはしないこと、それが一人暮らしをするための条件の一つだったからだ。そのため、ゼミが終わるとまっすぐ自分の部屋に帰る――穏やかと言えば聞こえはいいけれど、少しだけ単調すぎる日々を送っていた。

引っ越してきてからひと月近くたったある日、遊びに来た栞が言った。

「瑞月って、バイトもサークルもやっていないんだよね?毎日退屈じゃない?私は最近サークルに入ったんだ。そのうち、何かバイトもやってみようかなと思ってるとこ」

「私もね、せめてサークルくらいは入ってみようかなと思ってる。バイトはダメなの。それが一人暮らしを認める条件の一つだ、って言われていて。もしもバイトしたりしたら、すぐに実家に連れ戻すからね、って。――うちの親たちって、どうしてあんなに心配性なんだろうね。電話とかメッセージも毎日必ずよこすし、私のことそんなに信用していないのかな」

「そういうわけじゃないと思うよ。本当に瑞月のことが心配だからだよ」

栞は、よしよしと私の頭を撫でた。それからひと呼吸ほど置いて、おずおずといった様子で口を開いた。

「実はね。そんな瑞月に折り入って相談があるんだけど……」
< 34 / 191 >

この作品をシェア

pagetop