積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「相談?」

「瑞月って料理が上手でしょ。ほんとに時々でいいから、私たちに晩ご飯作ってくれたりしないかぁ、なんて……。図々しいお願いだってことは、もちろん分かってるんだよ。だからね、バイト代の代わりと言ったらなんだけど、材料は全部うちで買う。お兄ちゃんは料理しないし、したとしても、いかにも男の料理で大雑把すぎるし、瑞月も知っての通り私も下手でしょ?お恥ずかしい話、あたしたちの食卓事情、実はかなり切迫してるんだよね。毎日パンとお惣菜、お弁当ってわけにはいかないし、美味しくない料理ばっかりじゃ、味覚だって変になっちゃう。だめかなぁ……?」

そう言って、栞は上目遣いで私の表情を伺い見た。彼女の両手は、拝むかの如く胸の前で合わされている。

「それは別に構わないけど……」

一つの疑問が浮かび、私は首を捻る。

「それじゃあ、諒ちゃんは、今まで一人でどうしてたの?」

「学食とかお弁当、たまの男飯、あとは凛ちゃんとご飯一緒にしたりして、なんとかしてたみたい」

「凛ちゃんね。なるほど」

私は栞の答えに納得する。

「これからも、たまに凛ちゃんにお願いするのは難しいの?栞と凜ちゃんだって、知らない仲じゃないし」

別に嫌だと思ってそう言ったわけではない。本当は行きたい気持ちが強かったが、凛がいるのなら私の出る幕はさそうだと思ったのだ。

すると栞は微笑んだ。

「実は凛ちゃんね、最近いい人ができみたいなの。だから、遠慮した方がいいのかな、ってね」

栞も凜の恋愛事情は知っている。

「そうなんだ、全然知らなかった。凜ちゃん、私にも教えてくれたらいいのに……」

< 35 / 191 >

この作品をシェア

pagetop