【加筆修正中】積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「う、嘘よ。私を諦めさせるための嘘なんでしょ?だって、久保田君のことを聞いた人たち、誰もそんなことを言っていなかったもの。それが本当なら、どうしてもっと早く言ってくれなかったのよ!」
「周りが知らなかったのは、特に聞かれたことがなかったから話したことがなかっただけ。あなたに言わなかったのは、彼女を見つけ出して何か嫌がらせでもするんじゃないかと思ったから」

 諒はますます冷たい目を彼女に向けた。冷気すら感じそうなほどひんやりとしている。
 彼女は怖気づいた様子を見せながらも声を振り絞った。

「本当にいるなら証明してみせて」
「証明……」

 考える素振りを見せる諒に、彼女の顔には余裕のようなものが戻った。

「やっぱり嘘なんでしょ。いないものは証明できないものね」
「証明できないとは言っていませんよ」
「それなら今ここで電話するなり、呼んでくるなりしてみせて」
「面倒な人だ。仕方ない。それで諦めてくれるなら……」

 諒に彼女がいたなんてと二人の会話に驚き、私は寂しい気持ちになっていた。

 栞は知っていたのだろうか。二人して私には黙っていたのだろうか。私にも教えてほしかった――。

 仲間外れにされたような思いでいると、諒が突然私の肩を抱いた。その意味と状況を理解できず、おろおろして彼を見上げた。
 彼はさらに私を自分の方へと引き寄せた。

「こいつですよ。俺の彼女は」

 私と彼女は同時に声を上げた。

「えっ!」
「嘘よっ!」

 彼女は叫んだ直後にたちまち涙ぐみ、声を震わせて言った。

「そんなのは、この場しのぎの嘘に決まっているわっ」

 しかし諒はきっぱりと告げる。

「いいえ。本当です。な、瑞月?」
「え、あの……」
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