積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
最後に凛と会ったのは、この前の正月だった。その時には何も言っていなかったから、その後のことなのだろうか。水臭いと思ってしまった。

「私も本当に最近、お兄ちゃん経由でちらっと聞いたばかりだからね。そのうち、瑞月にも話すんじゃないのかな」

「そっか。それなら大人しく連絡待っていようかな」

「うん。そうして。――それでさ、最初の話に戻るんだけど。どうかな?だめ?」

「だめってことはないけど……。私、そんなにすごいものは作れないよ?」

栞の目が一気にぱっと輝いた。

「そんなことないって!絶対に私たちよりも上手だもん。それにさ、瑞月も一人でご飯食べて、寝て、学校に行くだけじゃつまらなくない?おばさんたちだって、私たちと一緒にいるってことが分かれば、きっともっと安心するよ。ずっと、ってわけじゃなくて、少しの間でいいから、それもたまにでいいから、どうかお願いします!」

もしかして、と私は目を瞬かせて栞を見た。

一人暮らしで、私が寂しい思いをしているんじゃないか――。そう思った栞がこういう回りくどい方法で、私を誘ってくれているのだと察した。確かに本音を言えば、一人ぼっちの食事は少し寂しいと感じていた。

栞の気持ちが分かった今、私は首を縦に振る。

「栞たちが迷惑じゃないんだったら、行きたい。お邪魔、してもいい?」

わくわくした顔で栞が言う。

「迷惑だとか邪魔だなんてこと、あるわけないでしょ?ぜひ来て!いつから来る?なんなら、週末はうちに泊まっていってよ。パジャマパーティしよう。二人で、だけどね」
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