積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
私はやや戸惑いながら栞に言った。

「泊まるのはどうなのかな……。だって、諒ちゃんがいるよね?」

兄のような存在とはいえ、諒は異性だ。泊まるのは栞の部屋だとしても、親たちに知られたらまずいような気もする。

けれど栞はあっさりと言う。

「お兄ちゃん?全然気にしないで大丈夫だよ。私の部屋に泊まるわけだし、なんなら鍵だってかけられるよ。だけどお兄ちゃんは、ご飯を食べてお風呂に入った後は部屋に引きこもっちゃって、朝まで出てこないの。それに、一から十まですべて、おばさんたちに報告しなきゃいけないわけでもないでしょ?」

栞の言葉に、私は少しだけ考えた。諒を相手に何かが起こるとはまったく思えないし、両親たちに事細かにすべてを話す必要も、確かにない。

「そう、だよね。……それなら、本当にたまには栞の部屋に泊まっちゃおうかな。栞もうちに来てよ。お布団はお母さんが来た時用に余分にあるから」

「行くよ、もちろん。泊まりっこしようね。なんだか、昔を思い出すねぇ。楽しみになって来た。ということで、第一回目は、次の週末にうちに来るってことでいいよね?」

「うん!それじゃあ、その日は何を作ろうか?そうだ。この機会に栞も料理を練習しようか。教えてあげるから」

「う、うん。ぼちぼちね……」

あははと乾いた笑いを浮かべる栞に、私はにっと笑った。
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