【改訂版】積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は想いを秘め続けていた〜
「今日から二か月の間、諒ちゃんが大嫌いなニンジンを毎回出すことにする。それ、絶対に残さないで食べること。そうしたら許してあげる」
「えっ……二か月も……」

 諒の顔が歪んだ。
 最近は、幼馴染たちと夕食を共にするのは週に二回。多い時には三回ほどだ。毎回となれば結構な頻度となる。

「嫌なら、もうご飯作りに来ない。もし栞からその理由を聞かれたら、私、素直に言うよ。そしたら諒ちゃん恨まれるかもね。あぁ、その時は、栞にだけご飯作ればいいのよね」

 我ながら意地悪だとは思う。本当は半分以上許してはいたが、私が受けたショックの大きさを思い知らせてやりたかった。

「分かったよ」

 諒は観念したように言った。

「絶交されるよりましだ。それで許してもらえるんなら、頑張って食べるよ」
「それでは、毎回ニンジンサラダやニンジンの煮物、ゴロゴロニンジン入りカレー、その他諸々ニンジン料理が並びます。そのつもりで」
「できれば食べやすいように頼むよ……」

 肩を落としてため息をつく諒の顔を見て、私はようやく頬を緩めた。
 彼と顔を会わせるのは少し気まずかったが、その後もこれまで通り二人の部屋へ遊びに行き、頼まれれば夕ご飯を振舞った。そのテーブルに毎回必ず何かしらのニンジン料理が並んだのは先の宣言通りだ。
 それが何回か続いた後のある日の夕食の席で、栞が不思議そうにテーブルの上を眺め回した。

「最近よくニンジンが出てくるよね。美味しいけど」

 私はちらっと諒の顔を見てから、にこっと笑って栞に言った。

「ニンジンって体にいいでしょ?それに、諒ちゃんももういい大人なんだから、いつまでも子どもみたいなことを言っていないで、克服した方がいいかなって思ったのよ」
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