積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「久しぶりだな。元気だったか?栞が変なこと頼んで悪かったな。でも、ものすごく助かる」

「諒ちゃん、久しぶり。元気そうだね。私の料理でいいんならいくらでも作るよ」

にこっと笑う私を見て、諒の目元がふっと緩んだ。

「それは楽しみだな」

「瑞月、早く上がって。そうだ、お兄ちゃん。言い忘れてたけど、今日は瑞月、うちに泊まるからね。間違っても変な気を起こさないでよ」

栞の言葉を聞いた諒は鼻の頭にしわを寄せた。

「くだらないこと言うなよ。……だけどうちに余分な布団って置いてあったか?」

「あるある。てゆうか、お兄ちゃん。いくら瑞月の前だからって、気を抜きすぎだよ。そんなだらしない恰好してないで、もうちょっとしゃんとして」

「うるさいな。自分の部屋なんだから、どんな格好でいたっていいだろ。瑞月、夕飯できたら呼んでよ。俺は自分の部屋にいるからさ」

「うん、分かった」

久しぶりに聞く二人の文句の言い合いに懐かしさを覚える。私はくすくすと笑いながら頷いた。

栞の後に着いてキッチンに入り、私は持参してきたエプロンを身に着けた。買ってきた物を広げながら栞に訊ねる。

「諒ちゃんって、やっぱり勉強で忙しいの?」

諒は、私と栞とは別の大学の医学部に通っている。今は確か五年生だ。
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