積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
諒は父親が医者だったこともあって、将来はクリニックを継ぐことを期待されていたようだった。

だから本人もそれを当然のことと受け入れて、勉強に取り組み始めたのだろう――。

周りの大人たちの会話から、私はそんな風に理解していた。

いつまでも子どもの時と同じ状態でいられないことは、理解していた。けれど、大好きな諒と今までのように会えなくなることは、やっぱり寂しかった。だからたまに彼に会えば、私は素直に喜んだ。嬉しくて諒の後をくっついて歩いた。

諒はそんな私にやや戸惑った顔をしたが、邪険に扱うようなことはなかった。本当の妹ではないから多少は遠慮があったのかもしれないが、いつだって優しく相手をしてくれた。

中学三年生になってからの諒は、高校受験のために、ますます本腰を入れて勉強に集中するようになった。

私はその邪魔をしないように、幼馴染たちの家に遊びに行くのを控えるようになった。栞とは外か私の部屋で会った。

それから数か月後、諒が無事に志望校に合格したと栞から聞いた時は、実の兄のことのように嬉しかった。

早くお祝の言葉を伝えたいと思いつつ、久しぶりに幼馴染たちの家を訪ねたのは四月に入ってからのこと。諒の高校の入学式の二日前で、私と栞の春休みが間もなく終わるという頃だった。
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