積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「私もやるよ」

立ち上がりかけた私を栞は笑顔で制した。

「瑞月はご飯を作ってくれたんだから、あとはゆっくりしててよ」

「でも……」

「いいからいいから」

「……じゃあ、そうさせてもらおうかな」

私は栞の言葉に甘えて、ソファに座ってテレビをつけた。海外の遺跡を紹介する番組をやっていた。自分の部屋にいる時は、一人の静かな時間が寂しくてただ適当につけていただけだった。だから、番組というものをちゃんと見るのは久しぶりかもしれない。

しばらくして、諒が戻って来た。

「風呂、もうすぐ沸くよ」

「はぁい。で、誰から入る?」

私は座っていたソファから首だけ回して言った。

「私は後でいいよ」

「それなら……。お兄ちゃんは最後でいいよね?レディファーストってことでさ」

「どうぞ」

「それじゃあ、あたし、先に入って来ようかな。お兄ちゃん、瑞月にお茶でも出してやってくれない?」

諒にそう言いおいて、栞はキッチンを出ていった。

「瑞月、何が飲みたい?と言っても、そんなに種類はないんだけど。コーヒー、紅茶、あとは炭酸くらいかな」

「じゃあ、炭酸ちょうだい」

「だったらグラスはこれだな。氷は二、三個で大丈夫か?」

言いながら諒はキッチンの中を甲斐甲斐しく動く。

そんな幼馴染の様子を眺めていたら子どもの頃のことが思い出されて、私は笑ってしまった。
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