積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「なんだよ」

怪訝な顔で振り返る諒に、私は口元を緩めたまま言った。

「そんな感じでいつも私たちの面倒を見てくれてたな、って思い出してたの」

諒は苦笑しながら、私にグラスを手渡してよこす。

「俺はその頃と見た目も中身も、あんまり変わってないって言いたいのか?」

「そういう意味じゃなくて、いつだって優しいお兄ちゃんだなってこと」

「一応ありがとうって言っとくか。……氷、足りない時は自分で好きなだけ入れな」

「うん。ありがとう」

私は諒からグラスを受け取り、泡がはじける透明な液体を注いだ。

中身が残ったボトルを冷蔵庫に戻そうとしたら、諒が私の手から取り上げてそれに直接口をつけた。ごくりと喉の奥に流し込んでから、彼は唐突に言った。

「瑞月は大学生になって、好きなやつはできたりしたのか?」

「は?」

入学してからひと月足らず、周りの顔さえもまだよく覚えていない。そんな状況で、そんな人がもうできているわけがない。

そう言うと、諒は軽く眉根を寄せた。

「お前って、大事に育てられた感じだろ?高校は女子校だったし、学校以外で身近な男と言ったら、おじさん、うちの父さん、俺、あとは少し特殊だけど凜くらい?世間知らずな瑞月が、変な男に引っ掛からないといいな、って心配してるんだよ」
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