積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
私は思わず吹き出してしまった。

「諒ちゃんったら『お兄ちゃん』を通り越して、まるで『お父さん』みたいだよ。しかも、うちのお母さんと同じようなこと言ってるし。あのね、地味な私がもてるわけがないんだから、そんな心配はいらないよ」

すると諒は呆れたような目で私を見て、ため息をついた。

「そう思っているのは自分だけだってこと、少しは自覚しといた方がいいと思うけど」

私は首を傾げて聞き返した。

「自覚?」

「そうだよ。……つまり、もう子ども扱いできないって思うくらい、すごく綺麗になったってこと」

私は目を瞬かせて、諒の顔をまじまじと見てしまう。

「いきなり何を言うのかと思ったら……。ものすごく恥ずかしいんだけど」

「恥ずかしいって何だよ。一応褒めたんだけど」

諒は苦笑いしながら文句を言う。

「諒ちゃんの口からそんな言葉が出るなんて、なんだかむず痒いっていうか、落ち着かないっていうか……。私、今夜、変なものは出していないよね」

「ほんと、失礼なやつだな。せっかく珍しく褒めたのに。とにかく、栞はあの通りはねっかえりだからあんまり心配していないけど、瑞月はなぁ……。どことなくホワンとしてるし、色々と心配になるんだよな」

「諒ちゃん今、本当に『過保護な父』状態になってるよ……」

< 44 / 191 >

この作品をシェア

pagetop