積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「もうなんとでも言ってくれ」

諒はふっと息をはきだしてそう言うと、昔よくやってくれたように私の頭を撫でる。

私はふくれっ面をして諒を見上げた。

「もう子ども扱いできないって言わなかったっけ?」

「瑞月、お待たせ。お風呂空いたよ」

廊下の向こうから栞の声がする。

諒は私の頭から手を離した。

「それ飲んだら、風呂、入ってきたら?」

「うん、そうさせてもらうね」

私は残りの炭酸を飲み干してグラスを片づけると、栞と入れ替わるようにして浴室へ向かった。入浴後は三人で他愛のない話に花を咲かせ、時間が深まる頃にはそれぞれの部屋に入った。

こんな風にまた三人で過ごせる日が来るなんて、と嬉しかった。結局、毎週のように幼馴染たちの部屋で一緒に夕食を取るのが、私にとっても当たり前のことになっていた。週末は栞の部屋に泊まるのも、ほぼ毎回のこととなった。

諒もいるからと思い、はじめは泊まることにやや抵抗があった。けれど栞が言っていた通り、食事を終えて入浴を済ませ部屋に入った諒とは、翌朝まで顔を合わせることはなかった。

私のことを妹のように思っているはずの諒との間に、何かが起こるはずがないことは分かっていた。それなのに、ちらとでも彼を疑うような気持ちを持ってしまった自分に、私は呆れながら反省したのだった。
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