積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
三月の最後の週になって、栞が引っ越してきた。なんやかんやと時折揉めながらも一緒に暮らし始め、大学の入学式も終わり、数週間ほど経ってからのことだ。

俺たちは改めて、自分たちの貧相な食事問題に直面していた。基本的にそれぞれが食べたい物を適当に買うか、適当に作るかしていたし、俺はもうこういう食生活には慣れていたから、さほど困っていなかった。だが、栞が音を上げたのだ。

「実家と瑞月の家のご飯が恋しすぎるよ。こんな食事ばっかりしてたら、体壊しちゃう。ねぇ、お兄ちゃんはこれまでいったいどうしてたのよ?」

「え?だからそれは、学食、コンビニ、適当に惣菜買ってとか。あとは、凜が割とよく遊びに来て飯を作ってくれてたからさ。そんな困るって程困ってなかった」

「凛ちゃん!そうか、その手があったか!」

料理が苦手と公言している栞がぱっと目を輝かせた。しかし俺は、栞の希望を奪うようなことを口にした。

「凛はさ、最近あんまり邪魔できないんだよな」

「どうしてよ」

「どうもさ、いい人ができたらしいんだよ」

「なるほどね……」

栞は軽く息を飲み、それから納得したような顔をして頬杖をついた。

「そういうことなら、頼ったりしたらダメだよね。えぇ、じゃあ、どうしようか……」
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