積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
諒がドアをノックして入って来たのは、栞の部屋で宿題を広げたタイミングだった。

「二人とも、飲み物持ってきたぞ」

何か月ぶりかに会う諒は、背がぐんと伸びていた。

「ありがと」

栞はグラスの乗ったトレイを受け取り、テーブルの上に置く。それから壁際に立ったままだった諒に向かって、怪訝な顔を向けた。

「何?なんか用でもあるの?」

「なんだよ、そんな風に邪魔者扱いしなくたっていいだろ」

「だって、これから瑞月と宿題やるからさ。手伝ってくれないなら出てってよ」

「ったく、可愛くないやつ」

鼻の上に軽くしわを寄せて、諒はくるりと背を向けた。

それを私は慌てて引き留める。

「待って、諒ちゃん!あのね……」

「ん?」

ドアの前で立ち止まった諒は、不思議そうな顔をして私を見た。

私はトートバッグの中に手を入れて、リボンシールを貼った小さな紙袋を取り出す。それを諒の前に差し出して、にっこり笑った。

「はい、これ。高校合格おめでとう」

「え?」

諒は驚いたように目を見開き、私の手元を見た。

「高校合格のお祝いに作ってみたんだ。普通のクッキーなんだけど、良かったら食べてね」

「へぇ、瑞月の手作り?すごいなぁ。どれどれ、早速」

諒は私の手から紙袋を受け取って中を覗き込み、クッキーの一枚をそっと取り出した。
< 5 / 191 >

この作品をシェア

pagetop