積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「ねぇ大原さん、連絡先、教えてもらえないかな?今度二人で遊びに行こうよ。行きたい所があるなら、連れて行ってあげる」

「え、えぇと……」

私は目を泳がせた。

こういう場合、一応は交換した方がいいものなのだろうか――。

迷っている私の隣で、答えを催促するかのように彼が携帯を取り出した。

「そんなに堅苦しく考えなくてもいいんだよ?」

「そういうものなんですか……」

しかし、できれば教えたくないと思う。なんと言って断ろうかと思った時、椅子と背中の間に置いていたバッグの中で携帯が振動した。

「電話みたいだね」

「は、はい。すみません、少し席をはずします」

彼に断りを入れて、私は急いで席を立つ。店の出入り口付近まで行き、急いで通話ボタンをタップした。

「もしもし」

電話の向こうから、不機嫌そうな諒の声が聞こえてきた。

―― 出るのが遅い。何してたんだよ。

「ごめん。今お店の中だから……。それより、どうかしたの?」

―― どうかしたの、じゃないだろ。さっき栞から聞いた。今日、合コンなんだってな。おばさんたちに知られたら大変なんじゃないのか。

「だから栞には口留めしてあるの。あとは、諒ちゃんさえ黙っていてくれれば大丈夫」

―― まったく……。そろそろ終わる時間なんだろ?これから店の前まで車で迎えに行くから、準備して待ってな。

「え、いいよ、そんなの。自分で帰れるよ」

―― いいから。これからすぐに家を出る。そこまでだと二十分もあれば着くと思う。着いたらまた電話するからな。すぐに出て来いよ。
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