積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
諒は言うだけ言うと、プツンと電話を切ってしまった。

「え、ちょっと、諒ちゃん?」

栞が迎えに行けとでも言ったのだろうか――。

首を捻りつつみんながいるテーブルに戻っていくと、ゼミ友達が私に声をかけてよこした。元いた席に目をやると、先ほど私に連絡先を訊ねてきた彼は別の女の子と話をしている。

合コンってこういう感じなのね……。

なるほど、と思いながら、私は空いていた友達の隣に腰を下ろした。

「大原さん。この後の二次会には行ける?」

「ごめんなさい。知り合いが迎えに来てくれることになったの。だから二次会はパスで」

「え、知り合いって何?いったいどういう知り合い?」

目を輝かせる彼女に、私は少し考えてから答えた。

「えぇと、兄みたいな幼馴染?」

「そんな知り合いがいるんだ。もしかして、合コンに誘ってしまって悪かったかな?」

「全然そんなことないよ。緊張したけど楽しかった。社会勉強にもなったしね。誘ってくれてありがとう」

「あはは、社会勉強ね。それじゃあ、また機会があったら勉強につき合ってよ」

そんな話をしていると、バッグの中で再び電話が振動した。画面を見ると諒だった。もう着いたのかと驚きながら、私はその場で声を落として電話に出た。

「もしもし?」

―― 店の前の通りに車を着けた。出てきて。

「う、うん」

私は電話を切ると、他のみんなに頭を下げた。

「ごめんなさい。私、先に帰ります。今日はありがとうございました。――えぇと、お金はこれで大丈夫?」
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