積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
私はゼミ友達にお金を渡す。

「うん、大丈夫だよ。今日は来てくれてありがとね」

「私の方こそ、ありがとう。それじゃ、また学校で」

最後にもう一度みんなに挨拶してから、私は急いで店を出た。

車種とかナンバー、聞き忘れてた――。

そう思いながら周りを見渡して、目の前の通り沿いに停まる一台の車に気がついた。

あの車?

近づこうかどうしようか迷っていたら、車の助手席側の窓が開いて諒が顔をのぞかせた。

「瑞月」

私はその車に近づき、開いた窓から車の中をのぞきこんだ。

「諒ちゃん、わざわざありがとう。でも、どうして?」

「心配だからに決まってるだろ。まずは乗りなよ」

「うん」

私は素直に助手席に乗り込んで、シートベルトをかけた。

それを確かめてから、諒が私に何かを差し出した。

「ほら、水」

「あ、ありがとう」

わざわざ準備してくれたのかと驚きつつ、私はペットボルトを受け取った。

諒が静かに車を発進させる。

諒ちゃんの車、初めて乗るな……。

物珍しげにきょろきょろと車の中を眺めながら、私は水を口に含んだ。

諒がハンドルを握ったまま私に訊ねる。

「酒、飲んだのか」

「よく分かったね。でも一杯だけ。グレープフルーツサワーっていうのを飲んだよ」

「大丈夫か。気持ち悪くない?」

「うん。この前実家で、みんなで飲んだでしょ?今日で二回目だし。ちょっとだけふわふわしてるけど」

「そうか」

赤信号で車を止めた時、諒がぼそっと言った。

「で、いい奴はいたか?」

「ん〜、特には……」
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