積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「彼氏候補でも探しているのか?」

「探してるわけじゃないよ。あれ?栞から聞いていない?数合わせだって」

「数合わせ? 」

「そ、諒ちゃんと同じだよ。栞から聞いたけど、諒ちゃんもたまに誘われて、行ったりしてるんでしょ?合コンに」

「栞のやつ……。口留めしとけばよかった……」

諒は忌々し気に言う。

「本当はそういうの、面倒でしかないんだけど、先輩なんかから誘われると断りにくい時があるんだよ」

「ふぅん。だったら特定の人でも作れば、そういうお誘いはなくなるんじゃないの?」

諒は大きなため息をついた。

「特定な人ねぇ……。いればいいんだけどな」

「いないの?」

「……まぁな」

曖昧な物言いに引っ掛かりを覚えたが、それに考えを巡らす前に、諒がふっと力が抜けたような声で私に訊ねた。

「そういう瑞月はどうなんだよ」

「どうって?」

「例えば、大学出て少し働いて、で、いずれは実家に戻って?あと数年もしたら、おじさんたちがお前の結婚相手を見つけて来たりするんじゃないのか」

「まさか、この時代にそんなことないとは思うけど……。でもそうねぇ。うちの場合はそれもあり得るかもね。進学で一人暮らしするって話になった時も、あれだけ反対されたからね。実家に戻れば、さすがに閉じ込められたりはしないだろうけど、もう色んな意味で自由がきかなくなりそうで怖いかな。だからその前に、この人なら、って思える人に出会えたらいいんだけど、って、たまに思ったりはするよ」

「瑞月ならきっと出会えるさ」
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