積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「おっ。上手に作ったな」

大げさにも聞こえるような口調で褒められて、私は赤面した。

「形、ちょっと変なのも入ってるかもだけど……」

ごにょごにょと言い訳めいたことを言っている傍から、諒はぱくりとクッキーを口の中に入れた。

「うん、美味しい。瑞月って、こんなこともできるんだな」

「まだ一人じゃ難しくて、いとこに手伝ってもらっちゃったけど。美味しいって言ってもらえて良かった」

安心した私は、にこにこしながら諒を見た。

「ほんとにうまいよ。ありがとな」

諒もまたにこりと笑い、袋を持ち換えて私の頭を撫でた。

その様子を黙って眺めていた栞が口を挟む。

「ねぇ、瑞月。あたしにはないの?」

「もちろん、ちゃんと持って来たよ。後で一緒に食べようね」

「やった!」

喜んだ顔をする妹に、諒がため息をつきながら言う。

「栞もさ、瑞月くらい器用だったら良かったのにな。こないだなんか、目玉焼きがスクランブルエッグに化けてたよな」

「ふん、悪かったわね。あたし、まだ小学生だもん。伸びしろあるもん。これから頑張るからいいの。だいたいさ、お兄ちゃんだって料理できないじゃん」

「俺はいいんだよ。料理上手な彼女を見つける予定だから」

「何よ、それ。今どきの男子は、料理上手な人の方がモテるんだから」

「あぁそうですか。つうか、ほんとお前って可愛げないよなぁ」

「実の兄に可愛げ見せたって、何もいいことないじゃん」
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