積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は想いを秘め続けていた〜
「お前は今日、恋人と別れたんだよな?」
「そうね。予想外だったけどね……」

 私は自嘲気味に答える。

「だったら、今夜の俺とのこと、浮気にはならないよな」

 諒の言葉に少し考える。

「……そう、なのかしらね」

 私は口ごもる。生々しい記憶が急に浮かんできて、恥ずかしさでいっぱいになった。

「それなら、お前を恋人にしたって構わないよな?」

 私は息を飲み、彼を見上げた。

「恋人って……。何を突然言い出すの?だって諒ちゃんは」
「どうせ、幼馴染だから、とか言うんだろ」
「そうよ。諒ちゃんは私にとって、お兄ちゃんみたいな人だもの」

 そう思っていたし、思っている。だからこそ、体を重ねてしまったことを後悔しているのだ。
 諒は私の唇に優しく触れながら言った。

「期間限定でいいから、俺の恋人役、やってくれないか」
「恋人、役?」

 私は目を見開いた。

「何よ、それ。よくもまぁ、そんなばかばかしいことを考えつくわね。どうかしてるよ」

 諒は苦笑する。

「今また、面倒な人に付きまとわれそうで困ってるんだよ」

 私は体を起こし、諒の顔をしげしげと見た。

「例えば、昔のあの人のような?」
「あぁ」
「いったいどういうこと?」
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