積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「早く帰ってください。何度も言いますけど、あなたの気持ちを受け入れるつもりは、俺にはまったくありません。俺にはもう関わらないでくれと、いったい何度言ったら理解してくれるんですか」

「私はあなたが好きなの。彼女がいないなら、なおさらきっと振り向かせてみせるんだから」

彼女はくすりと笑うと、その場に固まっていた私の前を通り抜ける。その時私をちらりと見て言った。

「じゃあね、久保田君のお知り合いさん」

「はぁ……」

私を見る彼女の目の中に、なぜか挑戦的な色が揺らめいたような気がした。私は唖然としたまま、彼女のまぶしい色合いの後ろ姿を見送った。

彼女の姿が消えてから、諒は気まずそうな声で私に声をかけた。

「変な所、見せてしまったな」

私ははっとして、ぎくしゃくとした動きで体の向きを変えた。

「何、今の人……」

諒は不機嫌な顔つきのまま、はあっと息を吐き出した。

「俺のストーカー。つきまとわれてて困ってるんだ。とにかく、中に入って。栞もそろそろ帰ってくるはずだから。まったく、あいつが帰ってくる前でよかったよ。でなきゃ、もっと面倒なことになってたかも」

ぶつぶつとぼやく諒の背中を見ながら、私は靴を脱いだ。彼の後に続いてリビングに入って行くと、彼女がまとっていた香りがまだ残っている。

「部屋に入れたんだ。ストーカーなのに」
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