積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は想いを秘め続けていた〜
「こんな感じなんだけど、未遂というか、注意っていうレベルだろ?例えばさ、学生時代のあの人みたいに勢いよく直撃でもしてきてくれたら、迷惑だってはっきり言えるんだけどさ。そういうタイプじゃなさそうなんだよな」
「諒ちゃんって、女難の相でもあるのかしら……」

 淡々と話していた諒の顔に、にやりとした笑みが浮かんだ。

「女難?それはあるかもな。今夜は酔っぱらった女の世話を焼く羽目になって、その上襲われたわけだからな」

 私は首をすくめて慌てて話を元に戻す。

「と、とにかく。諒ちゃんが嫌だと思うなら、派遣会社にも一応言っておいた方がいいんじゃない?だって、立ち入り禁止の場所にも入ったっていうんでしょ?」

 諒は唸る。

「その時、医局長や師長には相談したから、たぶん何らかの形で本人には伝わってると思う。それに、不快だとか嫌だっていうのは個人的な感情だからな。それ以外は今のところ具体的な被害はないし、仕事はできる人らしくて、管理局の人たちには重宝がられているみたいなんだよな」
「なるほど……」
「だから考えたわけだ。これ以上面倒なことが起きる前に、彼女がいるってことにして、牽制すればいいんじゃないかってね。こんなことを頼めるのは瑞月しかいないんだ」

 諒はそう言って私との距離を縮める。

「そんなの……。今度こそ本当に『そういう人』を見つけた方が早いんじゃないの?前にも言ったけど、諒ちゃんならすぐに見つかるって」

 私は諒が近づいた分彼から離れる。

「そう簡単に『そういう人』が見つかれば苦労しないんだよ」
「それはそうかもしれないけど……。そもそも理想が高すぎるんじゃないの?」

 諒の言葉に首を傾げた時、彼の唇が頬に触れた。
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