積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「違うから。誤解するなよ。お前か栞かと思って、確認しないでうっかりドアを開けてしまったんだ。そうしたら、止めるのも聞かないで勝手に部屋に上がり込んでしまって……」

疲労が混じった声で諒は言う。

その様子を見て、私ははっとした。

「ごめんなさい。部外者なのに、余計なこと言っちゃった……」

「いや、いいよ」

諒は苦笑いを浮かべると、私が何も訊ねていないのに話し出した。

「この前、やっぱり数合わせで行った合コンで会った人なんだ。当然あの人に興味もないから、連絡先を交換したいとか、今度二人で会いたいみたいなことをしつこく言われたけど、その度に何度も断ったんだよ。で、つい最近になって、その時の合コンの幹事役だった先輩から、彼女が大学の方にも来ていたみたいだって聞いてさ。しかも俺のこと、聞き回ってるらしいって。迷惑だなと思っていたんだ。そうしたら、どうやってか俺の住んでる所を調べたみたいで……」

「えっ、何それ。すごく怖いんだけど……。それで今日、いきなり訪ねて来たってわけ?」

「そういうこと。驚かせて悪かったな。嫌な気分になっただろ?」

「それはまぁ、大丈夫だけど……。帰る時にあの人、諦めないみたいなこと言っていたよね。振り向かせてみせるとかなんとか」

諒はため息をつく。

「その時はまた、何が何でも断るしかないな。最悪、先輩に相談するさ、それでもだめなら警察だ」

「いずれにしても、栞も一緒に住んでいるわけだから、早く解決した方がいいと思うよ」

「あぁ、それもそうだよな。……たださ、栞にはこのこと、内緒にしておいてくれないか」
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