積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
その小さな事件から二週間ほどたったその日、私は途中のスーパーで買ってきた材料を持って、幼なじみたちの部屋に向かっていた。

最近は、時々は私も買い物をしていくことにしていた。購入分のレシートを彼らに見せて、その分の代金をもらうという形を取ることにしたのだ。初めてそうやって買い物を済ませて行った日、自分で買ってきた分の代金はいらないと言う私に、二人は頑として首を縦に振らなかった。

「そこは最初に言った通り、うちで全部持つから」

そう言って笑う栞と諒に結局折れて、それ以降私はそのルールに従っていた。

私も一緒に食べているのだから、たまには払わせてほしいんだけどな……。

そんなことを思いながらも、今日の献立を考える。

「メインはパスタにしようかな」

あれとあれを作って、あれを添えて――。

二人の喜ぶ顔を思い浮かべながら、幼馴染たちのマンションの前まで来た時だった。

目の前に不意に人が現われた。ぶつかりそうになって、かろうじて体をよける。私は反射的に慌てて謝った。

「ごめんなさい!」

しかし相手は無言だった。

恐る恐る顔を上げて、途端に私は目を見開いた。驚きのあまり声がかすれる。

「あなたは……」

その人は嬉しそうに笑った。

「覚えていてくれたのね」
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