積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
目の前に立っていたのは、先日遭遇したあの派手な女性だった。

「久保田君のお知り合いさん、こんにちは。それとも、こんばんは、かしら」

今日もやはり、目にまぶしい色彩のワンピースを着て、その体からはあの日と同じ甘ったるい香りを漂わせている。

関わり合いたくない――。

私は目を逸らし軽く頭を下げて、彼女の前を急いで通り抜けようとした。

しかし、彼女の声が引き留めるように追って来た。

「ね、ちょっと待って」

それを無視して足を早めたが、このまま部屋まで着いてきそうな雰囲気だ。私は仕方なく足を止めた。

「……何かご用でしょうか?」

言ってすぐに後悔した。この前も感じたけれど、簡単に引き下がってくれるようなタイプではなさそうだ。この人をうまくかわせるかどうか自信がなくなってくる。私はエントランスの方に向かって、じりじりと後ずさりした。

私があからさまに警戒していることは、見て分かったと思う。しかし、彼女は気にした様子もなく小首を傾げてみせた。

「ん~、用というか……。ねぇ、あなたって、久保田君とも親しそうだったわね」

彼女はそう言って、私の手荷物に視線を向けた。

「もしかして、ご飯、作ってあげてるの?」

「これは、その……」

「ふぅん、まぁ、いいわ。あのね、念のため確認するけど、あなたは久保田君の彼女ではないのよね?」

確認と言って訊ねておきながら、私の返事を聞くつもりはまったくないらしい。彼女はすぐに言葉を続けた。

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