積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
私はため息をつきながら、目の前で繰り広げられている、掛け合いのような兄妹の言い合いを眺めていた。二人はいつもこんな感じなのだ。仲がいいからこそなのは分かっているけれど、そろそろ止めた方がいいと思った。

「瑞月みたいな素直で可愛い妹がほしかったよ」

「ちょっと瑞月、今の聞いた?お兄ちゃん、瑞月を妹にしたいんだってさ。瑞月にあげるよ、こんなお兄ちゃん」

止めるタイミングを見計らっているうちに、二人の口げんかに私まで巻き込まれ始めたようだ。

「ちょっと、二人とも、そろそろいい加減に……」

言いかける私を見て、栞はふくれっ面をした。

「まったく、瑞月もこんなお兄ちゃんのどこがいいのかしら」

「え、どこって……」

一瞬戸惑ったものの、思わず私は素直に答える。

「だって、諒ちゃんって優しいから」

そのひと言が、火に油を注いでしまうことになった。

「優しいのは瑞月にだけだよ。あたしにはこんなんだよ。ほんと、いつも口うるさいんだから」

「お前がそういう可愛くない性格してるからだろ」

「もうっ、二人ともやめてよ!本当は仲良しなくせに」

私は苦笑いしながら、二人の間に割って入った。

「栞、宿題始めようよ。終わんなくなっちゃうよ」

「あ、やだ、そうだね」

私の言葉に、栞はやっと今日の目的を思い出したようだ。それから、諒を追い払うかのようにしっしっと手を振る。

「ほら、お兄ちゃん、早く出てって」
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