積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「とにかく、私は彼とはただの知り合いなので、好みだとか、今好きな人がいるのかどうかなんてことは、全然知りません。だから、ご自分で最後にもう一度くらい直接ぶつかって、本人に聞いてみたらいかがですか。どうぞ頑張って。失礼します。さようなら」

私はぺこりと頭を下げて、くるりと彼女に背を向けた。しかし、彼女に腕をつかまれてしまう。

「ちょっと待って!ねぇ、私も一緒に連れて行ってよ」

「は?そんなこと言われても困ります。だいたい、どうして私に言うんですか?この前みたいに直撃してみたらいいでしょう?」

すると、彼女の態度が急にもじもじしたものに変わった。

「だって……。あなた、やっぱり久保田君とはとても親しそうに思えるんだもの。だからあなたがお願いしてくれたら、もしかしたら『うん』って言ってくれるんじゃないかな、なんて思って」

「お願いって何を……」

「私の気持ちを受け止めてくれるように口添えを……」

「まったく意味が分かりません。そもそも他人がお願いして、どうにかなるようなものではありませんよね?とにかく、この手を離して下さい」

「ねぇ、お願いよ」

「だから、どうして私が、見ず知らずのあなたと彼との間を、取り持たなきゃいけないんですか。分からない人ですねっ」

そうやって押し問答しているところに、慌てた声が足音と共に近づいてきた。

「こんな所で何やってるんですか!」

はっとして声の方に目をやると、諒が顔を引きつらせて駆け寄って来るところだった。

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