積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
私は驚いていた。息を詰めるようにして二人の会話を聞いていたが、内心ひどくもやもやしていた。なぜなら、諒に彼女がいたことを全然知らなかったからだ。

栞は知っていたのだろうか。二人して私には黙っていたのだろうか……。

私にも教えてほしかったのに、と寂しい気持ちになっていると、諒が傍までやって来て突然私の肩を抱いた。

この手は何なの?

状況を理解できず困惑していると、諒は私をさらに自分の方へと引き寄せ、そして言った。

「だって、こいつですから」

私と彼女は同時に声を上げた。

「えぇっ!」

「嘘よっ!」

彼女の方は叫んだ後、見る見るうちに涙ぐみ、震える声で言った。

「そ、そんなの、この場しのぎの嘘に決まっているわっ」

しかし諒は淡々と告げる。

「いいえ。本当です。な、瑞月?」

「え、あの……」

いきなり話を振られて私はうろたえた。

あれだけ彼女に「ただの知り合いだ」と連発したのに……。

しかし、諒の目は『早くうんと言え』と言わんばかりに、半ば脅し気味に私を見つめている。

この場をやりすごすためなのね、それなら仕方ないよね――。

私は自分をそう納得させると、諒の言葉に合わせて頷き、その嘘を肯定した。

「えぇ、本当はそうなんです」

彼女の目がカッと見開かれた。

「だってあなた、これっぽちもそんなこと言わなかったじゃないの。知り合いだとか無関係だとか言ってたわよね」
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