積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
諒はゆっくりと唇を離した。そのまま私の頭を自分の胸元へと引き寄せてから、彼女に顔を向けた。

「これで分かってもらえましたよね?」

「そ、そんな軽いキスなら、相手が誰だってできるでしょ」

諒はふっと嗤った。

「これ以上なんて、刺激が強すぎてあなたには見せられない」

ぶるぶる……という表現が当てはまりそうな様子で、彼女は私たちを凝視した。いや、正確には私を睨みつけていた。

「とにかく、そういうことですから。俺のことはもう完全に諦めてください。それに俺、あなたのように派手な人は嫌いだし、そのギラギラした色の爪もそうだ。いかにも料理をしませんっていう感じ、生理的に受け付けないんですよね」

「……っ」

彼女ははっとしたように、その手を後ろに隠した。そして力なくうな垂れると、ゆらゆらとした力のない足取りで私たちの前から立ち去って行った。

その後ろ姿が見えなくなってはじめて、私は深呼吸をし、唇を拭った。今のキスはアクシデントだと言い聞かせながらも、泣きたいような気持ちになる。

「諒ちゃん、ひどいよ。いったいなんなの。他にもっとやりようがあったんじゃないの?私、ファーストキスだったのに、こんなことで……」

言っている傍から涙が滲んできた。

そんな私の頭を諒は優しく撫でた。

「ごめんな、本当に。つまんないことに巻き込んでしまったよな」
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