【改訂版】積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は想いを秘め続けていた〜
幸恵は二回も「将司さん」と彼の下の名前を口にした。
私たちがすでに別れたことは知っているはずだ。それなのに、わざわざ私の所にやって来たところが嫌らしく感じられて、苛立つ。もしも周りに誰もいなかったら、睨みつけてやりたい衝動に駆られそうになったが、そんなことはしない。今の私と将司は何の関係もないし、彼に対する未練がましい気持ちも一切ない。だから私は仕事用の作り笑いを浮かべて、穏やかに彼女を見つめ返した。
「お疲れ様です、鈴木さん。わざわざ教えてくださってありがとうございます。ですが今日は、部長に用事があって伺ったんです。失礼しますね」
軽く会釈をして、私は彼女の側を通り抜けた。
その時、ちらりと彼女の指先が目に入る。すらりと伸びた長くて細い指、綺麗な形の爪は華やかなマニキュアで彩られていた。仕事場での装いとしてはどうなのかと思うが、ふんわりと綺麗に巻いた髪、フェミニンなブラウスと腰のラインも露わなタイトスカート。そこからすらりと伸びた脚に、思わずどきりとしてしまう。
幸恵は私と将司の関係を壊した張本人。その彼女に対して思うことではないかもしれないが、ふと思ってしまう。
男の人って、やっぱり彼女のような色っぽい人に弱いのかしら?
続いて諒の顔が頭に浮かぶ。
諒ちゃんもそうなの?昔は派手な人は嫌いだと言っていたけれど、それは今も同じなのかしら――?
私は整えただけの自分の指先に目を落とした。諒の好みの女性のタイプが気になり出して、胸の中がもやもやし始めた。きっとこの時にはもう、自分の想いに付けるべき名前が何であるのか、分かっていたのだと思う。
私たちがすでに別れたことは知っているはずだ。それなのに、わざわざ私の所にやって来たところが嫌らしく感じられて、苛立つ。もしも周りに誰もいなかったら、睨みつけてやりたい衝動に駆られそうになったが、そんなことはしない。今の私と将司は何の関係もないし、彼に対する未練がましい気持ちも一切ない。だから私は仕事用の作り笑いを浮かべて、穏やかに彼女を見つめ返した。
「お疲れ様です、鈴木さん。わざわざ教えてくださってありがとうございます。ですが今日は、部長に用事があって伺ったんです。失礼しますね」
軽く会釈をして、私は彼女の側を通り抜けた。
その時、ちらりと彼女の指先が目に入る。すらりと伸びた長くて細い指、綺麗な形の爪は華やかなマニキュアで彩られていた。仕事場での装いとしてはどうなのかと思うが、ふんわりと綺麗に巻いた髪、フェミニンなブラウスと腰のラインも露わなタイトスカート。そこからすらりと伸びた脚に、思わずどきりとしてしまう。
幸恵は私と将司の関係を壊した張本人。その彼女に対して思うことではないかもしれないが、ふと思ってしまう。
男の人って、やっぱり彼女のような色っぽい人に弱いのかしら?
続いて諒の顔が頭に浮かぶ。
諒ちゃんもそうなの?昔は派手な人は嫌いだと言っていたけれど、それは今も同じなのかしら――?
私は整えただけの自分の指先に目を落とした。諒の好みの女性のタイプが気になり出して、胸の中がもやもやし始めた。きっとこの時にはもう、自分の想いに付けるべき名前が何であるのか、分かっていたのだと思う。