積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
子どもの時にも一度、こんな諒を見たことがあった。原因は覚えていない。

――諒ちゃんとはもう口を利かない!

ものすごく怒った私が、諒にそう言い放ったことがあった。そして実際に何日間か、諒のことを無視し続けた。けれど最終的にはお菓子か何かでごまかされ、許してしまったのだ。

それを思い出したら、腹立ちが少し収まった。同時に冷静さが戻ってきて、あの女の人が諒の彼女になるようなことがなくて本当に良かった、と思った。これからはもう、諒が落ち着いて暮らせればいいと、祈るような気持ちになったりもする。

考えた私は、あることをペナルティに課すことを思いついた。たぶん私が知る限り、諒にとっては最大最悪の嫌がらせになる。そうすれば私の溜飲もだいぶ下がるはずだ。

「今日から二か月の間、諒ちゃんが大嫌いなニンジンを毎回出すことにする。それ、絶対に残さないで食べること。そうしたら許してあげる」

「えっ……二か月も……」

諒の顔がひどく嫌そうに歪んだ。

最近は、諒たちと一緒に夕食を取るのが週に二回、多い時は三回ほどになっている。だから、毎回となれば、なかなかの頻度となる。

「嫌なら、もうご飯作りに来ない。もし栞にその理由を聞かれたら、私、素直に言うよ。そしたら諒ちゃん恨まれるかもね。あ、その時は栞だけに作ればいいのか」

我ながら意地の悪いことを言っている自覚はあった。本当はもう半分以上許してはいたけれど、私がそれくらいショックだったということを思い知らせてやりたいと思った。
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